カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「こんな倫理に反すること、私にはとても目を瞑ることができません。説得もしてみたのですが、聞いてはもらえなくて……仕方なく城ケ崎様にご報告した次第です……」

鞠花は嘆かわしげに額に手を当てる。

総司は黙ったまま、写真をよくよく観察した。

ブラウンのワンピースに革のバッグ――夕べの彼女と同じ服装だ。

特にこのパンプスは、つい数日前、パリから彼女に贈ったばかりのもの。彼女の手元に届いたのは二、三日前のはずだ。

この写真は昨日撮られたものではないだろうか。

周囲の明るさと、店の看板に明かりが灯っていることから察するに、完全に日が落ちる前、夕方――つまり、帰宅直前。

この推理が正しければ、総司と顔を合わせる数時間前の写真ということになる。

「鞠花さん。これは、いつの写真ですか?」

総司が低い声で尋ねると、鞠花はふいっと視線を逸らし嘯いた。

「ええと……いつだったかしら。人に依頼して撮らせたから忘れてしまいましたわ」

「写真の場所は?」

「清良の会社の近くと聞いています」

「……このあと、ふたりがどこへ行ったかは」

「それは……私の口からはとても……!」

ホテルに入ったとでも言いたげに憐れんで口元を覆う。

フッと総司は笑みを漏らした。

だいたい、あの倫理観の塊のような女性が、こんな街中でイチャイチャと不倫などできようか。しかも自身の勤める会社のすぐ近くで。

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