カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「……調べさせますか?」

真鍋の問いかけに総司は「いや。いい」と短く答える。

「妻は新婚早々浮気ができるようなふてぶてしい女ではない」

あくまで総司は冷静だ。こんな稚拙な嫌がらせに踊らされるほど浅慮ではない。

――と思いきや。お茶の器を茶托に置こうとして手を滑らせ、ガチャンと中身をぶちまける。

「……大丈夫ですか?」

「…………」

どうやらあまり大丈夫ではないらしい。

動揺していることに自ら驚きつつ、執務卓に戻りどっしりと腰を据える。

自分らしからぬ考えを巡らせ、深く悩んだあと、観念して口を開いた。

「……今後一カ月は日本を離れる予定だったな」

真鍋は「はい」と返事をして胸元からタブレットを取り出す。指先を滑らせスケジュールを確認しながら、ロンドン、フランクフルト――とこれから向かう都市の名前を挙げ連ねる。

「間に一日、休暇を作れ」

総司の言葉に、真鍋は一瞬沈黙する。

分刻みのスケジュールの中に一日休暇をねじ込むことがどれほど難しいか……が、ノーとは言わず「わかりました」と答える。

真鍋の脳内では外交のプライオリティ付けとフライトプランの練り直しが始まっていることだろう。

< 148 / 262 >

この作品をシェア

pagetop