カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「ありがとう!」

すかさず北村は扉の隙間に身体を押し込む。このチャンスを逃すまいとでもするように。

その強引な仕草に、清良は早速自分の行動を後悔した。

「あの、北村くん! 待って!」

「すぐ帰るから! ほんの少し家を案内してくれよ」

清良を置いてずかずかと敷地の奥へ突き進んでいく北村。玄関に辿り着くと家主の了承も待たずに勝手に扉を開けようとした。

「待ってったら、北村くん!」

しかし、扉が開くことはなくガチンという鈍い音に阻まれた。

鍵がかけられていることに気づいた北村は、慌てて駆け寄ってきた清良に不満げな顔を向ける。

「敷地内を歩くだけなのに、いちいち鍵をかけているのか?」

「オートロックなの」

清良は脇のパネルで指紋認証を行い、ロックを解錠する。

「でも、勝手に入られると困るの――」

だが、言い終わる前に北村はさっさと玄関の扉に手をかけている。

「へぇ! すごい豪邸じゃん。おじゃましまーす」

清良が靴を脱ぐのにもたついている間に、北村はすでに家の中だ。リビングに向かって廊下を直進している。

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