カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「本気で抗おうと思えばどうにでもなるだろう。両親だって、娘が苦しめられていると知れば、何かしら手を打ってくれただろうに」

「……我慢には慣れていますから。それに、あと何年かすれば両親は定年を迎えて、院瀬見家を出ることになります」

「そんな悪戯好きのお嬢様が君というおもちゃを簡単に手離すとは思えないが。すぐ次の弱みにつけこまれるんじゃないのか?」

ギクリとして肩を震わせる。鞠花にとって、一番のおもちゃは清良。

実は、すでにひとつ心当たりがある。

着替えに通された部屋で、隠しカメラを見つけてしまったのだ。監視カメラではない、明らかに盗撮用の。

鞠花はしらばっくれていたが、あのお粗末な仕掛け方は彼女に違いない。

いざというとき、清良が裏切らないよう、切り札として撮っておこうとしたのかもしれない。

「状況を打破しようとしたことは?」

「我慢すれば、済む話ですから」

きゅっと自身の身体を抱きしめ、身を竦ませる。

折り合いをつければ、そう苦しいことでもない。別に、死ねと言われているわけでもないのだから。

何より、両親のこともあるのに騒ぎを起こしたくない。

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