カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
第七章 偽りの結婚とその行方
退職予定日がやってきた。

しかしその日、清良は突然部長に呼び出され、専務の意向で退職の手続きが差し止められたことを知らされた。

不倫の疑惑が晴れたということらしいが、一体何が起きたのか、急にどうして決定が覆ったのか、清良にはさっぱりわからない。

退職が白紙に戻ったおかげで引き続き働けることになり、仲根には『家庭の事情』が解決しましたと報告した。

「なんだかよくわからないけれど、よかったー。また一緒に働けるんだね」

彼女も安堵してくれた様子。清良は当惑しつつも「お騒がせして申し訳ありませんでした」と苦笑してごまかす。

(……もしかして、総司さんが手を回してくれた、とか?)

話したときの反応を見る限り、退職に興味を示したようにも思えなかった。

事情も知らないまま何かをしてくれたとは考えにくいけれど、底知れない彼のことだ、裏で情報を掴んで手を回していたとしても驚かない。

そんなことをぼんやりと考えながら、自分で退職手続きの取り消し処理を行う。

仲根は隣の席で「危なかったー、来週、仕事いっぱいあるんだよね。ひとりでどうしようかと思った」と清良に引き渡す分の仕事をまとめていた。

仲根の仕事の分量が、心なしか清良より少ない気がするのは――迷惑料ということにしておこうと思う。

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