カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「そんなんだからいいように遊ばれるんだ。君は他人につけ込まれる才能があるよ」

男性は端正な顔立ちを歪めて、諦めたように息をついた。

清良の煮え切らない性格に苛立ちを感じているのかもしれない。どう見ても目の前の男性は、真逆の性格をしている。 

「本当に。たいした忠誠心だ。もう少し使い道を考えたほうがいい」

落胆したように言い置いて、男性は立ち上がる。

何をするのかと思いきや、胸ポケットから携帯端末を取り出し、清良に見えるように掲げた。

「君の生い立ちには同情するが、俺は招待客に替え玉を使うような無礼を黙認するつもりはない。この責任は彼女の父親である院瀬見議員に取ってもらう」

どうやら議員に電話をかけるつもりのようだ。携帯端末に指を滑らせる男性の姿を見て、それはまずいと蒼白になった。

「あの……! 院瀬見議員には黙っていてもらえないでしょうか……?」

議員は温厚な人だ。娘を甘やかしすぎるきらいがあり、鞠花が多少やんちゃをしたところで目をつむってしまう。

とはいえ、さすがに『オペラなんてだるい』という理由で大切な社交を放棄したうえに身代わりを立てたと知れば、黙ってはいないはずだ。

しかも、財閥である城ケ崎家のご子息が直々にクレームを言い渡してきたとなれば、ただでは済まないだろう。

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