カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
議員はうんうんと納得の様子で頷いており、総司の提案に心から賛同しているようだった。

しかし、鞠花は違う。日本を離れるなんて、彼女からしてみたらとんでもないことで――。 

「冗談じゃない! 私、英語なんて……!」

できない、そう言おうとしたのだろうけれど、人前で恥を晒すことを躊躇い口を噤む。

総司はしたり顔で鞠花を見下ろす。日本を出て一から出直してこい、そんな思惑を滲ませながら。

「ちょうどいいじゃないか。英語くらい嫌でも身につく」

「ふざけないで! それじゃあ単なる島流しじゃない!」

半狂乱になった鞠花を落ち着かせようと、議員は両肩をしっかりと抱く。

「なんてことを言うんだ鞠花! いいかい、このスクールは上流階級の令嬢のみ入学を許された特別なスクールなんだ。城ケ崎さんは、鞠花のことを考えてわざわざ入学を斡旋してくださったんだぞ!?」

「勝手なこと言わないで! 絶対に嫌よ!」

父親の腕を振り払い、逃げ出す鞠花。

会場はもはや騒然としていた。会話はすべて筒抜けで、予想もし得ない親子喧嘩に誰もがこそこそと囁き合っている。

そんな中、総司はそっと清良の肩を抱き、会場の出口へ向かった。

< 242 / 262 >

この作品をシェア

pagetop