カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「清良、君もその格好は不適切だよ。急なお招きで仕方がなかったのかもしれないが」

ブラウスとスカートをシンプルに合わせただけで、ジャケットの一枚も着ていない。清良は無神経だった自分を悔いた。

妻の無作法は夫の評価にも繋がる。優しい声でたしなめられてしまったから余計につらい。

いっそしっかり叱ってくれれば、まだ救いようもあるのだが。

「……ごめんなさい。総司さん」

「君は何かあるとすぐ俺に隠そうとするけれど……」

総司の手が清良の頭をポンポンと撫でる。

「無駄だ。隠してもすぐにわかる。だから困ったときは素直に頼ってくれ。俺が勘づいてしまう前に」

ニッとしたり顔で笑みを浮かべる。すべてお見通しとでもいうように。

北村に襲われたときや、解雇されそうになったときもそう。いつだって総司は清良の危機に駆けつけてきてくれた。

今だって、総司がいなかったら鞠花に弾劾されていただろう。

総司に迷惑をかけたくなくて、ひとりでどうにかしようとするけれど、結局は彼に助けられている。

「……ありがとうございます。本当に……」

彼の脇腹にきゅっと身を寄せる。清良から寄り添ってくることは珍しく、総司は満足そうに肩を抱く手を強めた。

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