カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「北村くんのことも、ありがとうございます」

清良が頭を下げると、総司は不服そうに手脚を組んだ。

「俺はただであの男を許すつもりはないけれどな。しっかり働いてもらうつもりだ。甘やかさなくてかまわないと、彼の就職先にも伝えてある」

北村にもいい転機が与えられたようだ。今度こそおいしい話に飛びつかず、堅実に働いてほしい。

自宅に到着し、真鍋は門の前でふたりを降ろした。

「総司さん、三時間後に出発です」

「わかった」

「……これからお仕事ですか?」

てっきり家でのんびりできるものだと思っていた清良は、内心がっくりと落ち込む。

バレないように気をつけたつもりだったが、どうやら顔に出ていたらしく、総司は困ったように苦笑した。

「すまない。なるべく、そばにいたいとは思っているんだが」

「あ、いえ、いいんです、気にしないでください」

慌ててごまかすも、時すでに遅し。運転席の真鍋まで苦笑している。

「総司さんは、奥様と結婚されてかなりお変わりになりましたよ。以前はすべての仕事を自分でこなそうとしてらっしゃったんですが、人に任せるということを覚えましたから。いずれは総司さんの負荷が分散され、人道的な休みが取れるようになると思います」

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