カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
なにを言われたのかわからず、清良はぽかんと口を開けた。

「つ……ま……ですか?」

「そう。妻。伴侶のフリをして欲しい」

彼はずいっと顔を近づけて、どこか悪戯っぽく囁く。

「正確に言えば、フリではなく、伴侶そのものだがな。欲しいのは妻帯者という肩書き。籍だけ貸してもらえれば、あとは自由にしてくれてかまわない」

清良はいっそう目を丸くする。

戸籍ってそんなに簡単に貸し借りできるものだっただろうか。これまでの人生で培ってきた常識をまるっと覆されたような感覚。

「俺と結婚してくれ。愛はいらない。ただ、妻が必要なんだ」

耳を疑うようなことを、ひどく真剣な眼差しで頼み込まれる。

いつか清良も、生きていればこの先、男性からプロポーズのひとつもされることがあるかもしれないと思っていた。

だが、こんなはずではなかった。プロポーズとは、もっと甘く幸せで、温かな愛情に包まれているものだと――。

「意味が……わかりません……」

少なくとも、清良には理解できない。愛はないが籍が欲しいという考え方は。

仕方がないとでもいうふうに、男性は無茶苦茶なプロポーズの真意を説明してくれる。

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