カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
北村は鞠花の友人であり、世話係。つまり、清良と似たようなポジションに立つ男である。

しかし、清良が弱みを握られ嫌々鞠花の傍にいるのに対し、彼は金銭的な恩恵を受け自ら進んで鞠花の傍にいる。

北村は鞠花に一流企業への就職を斡旋してもらい、お小遣いまでもらっているのだ。彼女に頭が上がらない。

一方、鞠花がいつまでも彼を手元に置いておく理由は、おそらく清良への当てつけだろう。

北村は、清良が高校の頃に付き合った、最初で最後の恋人。

おそらく鞠花は、北村の姿を清良へ見せつけることで、反抗する意欲を削ぐように仕向けていたのだろう。服従の象徴とも言える。

「天羽さんはもう城ケ崎家の人間だ。怪我でもさせたら、大事になる!」

北村にたしなめられて鞠花はいっそう苛立ちを強める。けれど、その言葉の意味するところがわからないほど無知でははない。

清良の安全は、城ケ崎家という後ろ盾によって担保されている。

総司が直々に院瀬見議員、つまり鞠花の父親と話をつけたのだ。

天羽清良と結婚するつもりだ。そして、結婚にあたり、院瀬見家で働いている彼女の両親を、城ケ崎家の使用人として迎え入れたいと。

ふたりの結婚に関しては、院瀬見議員が口を出すような問題ではないし、両親の件はすでにお金で決着がついている。

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