カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
もう鞠花が泣こうが喚こうが、結婚は揺るがないし、清良の両親を盾に脅すことも不可能だ。

総司は『面倒な社交を替え玉で乗り切ろうなんて、人生をなめくさっているお嬢様に、お仕置きを与えてやらなければな』なんて笑いながら言っていた。

いずれにせよ、これ以上、清良がここに留まる理由はない。

鞠花に背を向け、客間の出口に向かうが。

「あんたみたいな平凡な女が、城ケ崎さんと釣り合うとでも思ってんの……!?」

鞠花のひと言に、清良はぴたりと足を止める。一番痛い所を突かれてしまったから。

「どうせすぐに飽きて捨てられるわよ。あんたなんて地味で何の利用価値もない、つまらない女なんだから」

清良はきゅっと奥歯をかみしめる。そんなことは自分が一番よくわかっている。

鞠花を押さえていた北村が、気遣わしげに清良を覗き込む。

「嘘みたいな話であることは確かだよ。とても天羽さんが城ケ崎さんに相応しいとは思えない」

ごく当然の反応に、清良は沈黙を続ける。一般人と大富豪が結ばれるなんてまずありえない。

鞠花が北村の腹を小突く。もっとはっきり言ってやりなさいよ、とでもいうふうに。

仕方なく北村は要求に応える。
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