カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
彼の身体を抱き留めながら、清良は必至に声を絞り出す。

本当は心地よすぎて、意識が飛んでいってしまいそうだったけれど。

なんとか理性を保って、彼の顔を覗き込んだ。

「どうして、抱くんですか……」

彼が清良の首筋を食べながら、くぐもった声で答える。

「どうしてって。夫婦だからだ」

「でも、契約結婚なのに……」

ふたりの結婚はあくまで契約。こんなことまでする必要はないのではないか。

なのに彼は、心の結びつきは拒むくせに、身体はしっかりと結びつこうとする。

「君がもの欲しそうな目で俺を見つめているからだ」

唇を胸のほうへすべらせながら、彼は吐息交じりに囁く。

あっ、と清良は甘い呻きを漏らした。溺れるなと注意されたばかりなのに。

こんなに身体を愛されては、身も心も絆されてしまいそうだ。

「そんな目、してません……義務でしているのなら、やめてくださって結構です……」

憐れだから抱いてやろう、そんなふうに思われているのなら、いっそ抱かないでほしい。

けれど、そんな清良の精一杯のプライドを総司は軽く受け流した。

「勘違いしないでくれ。嫌々やっているわけではないし、女なら誰でもいいってわけじゃない」
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