カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「それ、適当に包んでもらえるか? 車の中で食べる」

え……と清良は一瞬フリーズする。

しかし、すぐに気を遣ってくれたのだと理解して「はい!」と返事をした。

何か包むものはあっただろうか。そういえばどこかの戸棚に使い捨てのランチボックスやお弁当箱があったような。

何か所か戸棚を開き、ようやく探し当てたランチボックスに、清良はサンドイッチを並べて風呂敷で包む。

しばらくすると、身支度を終えスーツに身を包んだ彼がリビングにやってきた。

今日も紳士たる装い。夕べの野性味溢れる彼とはまた違った、知的な魅力を放っている。

「これ、どうぞ」

臙脂色の風呂敷を見た総司は、珍しかったのかクスッと小さく笑った。

「サンキュ」

受け取ってひょいっと小さく掲げる。今日の彼の手荷物はお弁当だけだ。そして、スリーピースのスーツに風呂敷は、かなりの違和感……。

「あの……無理に食べていただかなくても、大丈夫ですからね? 迷惑だったら言ってください」

おずおずと覗き込むと、清良の恐縮っぷりがおかしかったのだろうか、今度こそ総司は肩を震わせてくつくつ笑った。

「迷惑かどうかは、味を見てから考える」
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