カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
この我慢強さを見初められて、契約結婚の相手に抜擢されたのだ。「期待外れだった」なんて言われたくない。

「居心地、悪かったかな……?」

本人は落ち着きすぎたと言っていたが、そのせいで寝坊をしてしまったのも事実。

仕事を円滑に回すための偽装新婚生活が、逆に仕事に支障をきたしているとなれば問題だ。

よくよく考えてみれば、律儀にこの家に帰ってくる必要もない。

籍さえ入れてしまえば、別居生活でも問題ないはずだ。いちいち帰る家を嗅ぎまわる輩もいないだろう。

ましてや、家の中での行動は自由。

清良を抱く必要もないし、ベッドをともにする必要もない。別れ際のキスだって。

「……どうしてこんなことするんだろう?」

彼の行動がさっぱりわからない。首を傾げながらリビングに戻る。

そして、大事なことをひとつ思い出し「あ」と清良は手で口を覆った。

「水筒、持っていってもらうの、忘れちゃった」

もそもそとしたサンドイッチを食べたら、絶対に水分が欲しくなる。

どうか秘書の方がお茶でも持っていますようにと祈った。


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