カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「あ、あのっ……なんでもありま――」

慌てて弁解しようとしたとき。男性が人差し指を清良の唇にぴたりと当てた。

美貌を眩しく緩ませて、静かに囁く。

「安心しなさい、悪いようにはしないから」

思わずドキリとしてしまったのは不可抗力だ。

見目麗しい紳士に抱かれ優しく微笑まれたら、大抵の女性は抗う気力を失ってしまうもの。特に目の前の彼はとびきり秀麗。

男性の笑顔に安堵したのか、あるいは身体が限界に達したのか。視界がぼんやりと霞んでいく。

いつの間にか瞼は閉じていて、聴覚だけがかろうじて残った。

近づいてくる複数の足音。騒ぎを聞きつけたスタッフだろうか。

「どうされましたか?」

「救急車を呼びましょうか?」

しかし、清良を抱きかかえた男性は慌てふためくスタッフたちを制し「いや」と低い声で命じる。

「『部屋』に運ぶ。鍵を持ってきてくれ」

そう聞こえたかと思うと、清良の身体はふわりと重力に逆らい浮き上がった。

そのままゆらゆらと揺られ、一体どこへ運ばれたのか。

意識が途切れた清良にはもう知る術がなかった。

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