カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
総司の前でこんなにも自由奔放な発言をする人間は、真鍋だけである。

それでも許されるのは、単純に真鍋が優秀だからだ。

もちろん、総司と真鍋の間にははっきりとした主従関係があるし、真鍋も主人を立てることを忘れない。だが、ときに辛辣な意見を発することもあり、そういうときはだいたい正論である。

総司も、彼に従うことはしないが、意見をないがしろにもしない。

「真面目な話、そろそろ後継を育てるほうへシフトしていきませんと。このままではせっかくの奥様にも逃げられてしまいますよ」

後継というのは、仕事を割り振れる人材を意味している。

現在、総司は複数の企業の経営者でありオーナーでもある。金融、不動産、貿易、彼の手掛ける事業は多岐に渡る。

ときには外交官の真似事をして、各国の企業と日本を繋ぐ架け橋にもなる。政府を巻き込んでの巨大プロジェクトの先頭に立ち、動く金は国家規模。

城ケ崎近代オペラホールもそのひとつだ。英国のショービジネス界の重鎮から、日本の富裕層向けに商売を始められないかと持ちかけられ、今のかたちを提案した。

日本の芸術的発展、文化的社会貢献などあらゆる名目が謳われているが、実際のところ、とある資産家の鶴の一声で建設された独善的な施設である。

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