カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
そして一番の問題は、それらの事業の采配をほとんど総司ひとりで振るっているということ。

どんなに総司が敏腕な経営者といえど、身体ひとつで捌ききれる量ではない。現に、総司のスケジュールは月休一日あればいいほうだ。

ジェットセッターなどと呼ばれているが、実のところ、多忙につき各所に引っ張り回されているだけである。

超過酷な営業職。担当エリアは全世界。

「そもそも、その量のお仕事をおひとりの力でやりきろうとすることが間違っています。他人に任せることを覚えてください。あなたは本来、東京のオフィスで部下の話を聞いてイエスノーを答えるだけでいいんですから」

「実際に他人に任せた結果を覚えているか?」

車を走らせながら真鍋は答える。アメリカでの不動産事業撤退、サウジアラビアでの資源開発は落札し損ね、シンガポールでの企業誘致は失敗に終わり――とそこまで挙げ連ねたところで「もういい」と総司が遮る。

「俺より判断力の優れた人間がいれば、大喜びで任せるさ」

が、いないだろう?という詰問を省略して総司は黙る。

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