カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
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『オペラなんてだるいわ。代わりに行ってきてよ』
きっかけは彼女のそんな気まぐれなひと言だった。
院瀬見鞠花――清良と同じ年で、平たく言えばお金持ちのお嬢様である。
ふたりは幼い頃から一緒にいるが、その関係は友人というには歪すぎた。
高校生になった頃には完全に主従関係ができあがっていた。
彼女のワガママはこれが初めてではない。
アレをやれ、コレをやれとパシリのごとく命じられ、面倒な社交の替え玉を任されることもしばしば。
その中でもオペラ観劇やクラシックコンサートは清良にとって楽しみのひとつだった。
普通に生きていれば縁のないような、素敵な舞台を見ることができたから。
しかも、高級なアクセサリーやドレスを借りて一日お姫さま体験付き。悪くはない条件だ。
だが、今回に限ってコルセットを着けろと要求されたから困ってしまった。
きっとこれも鞠花が新しく見つけた清良をからかうためのギミックだ。
しかし、清良よりひと回り小柄な鞠花のサイズに仕立てられたコルセットが、身体に合うわけもない。結果、倒れてしまったわけだ。
こんなひどい目にあっても、清良は鞠花に従うほかない。なぜなら――。
「――っ!」
ふかふかの大きなベッドの上で清良は目を覚ました。薄い毛布が一枚、身体にかけられている。