カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
東京本社の三階に清良の勤めるオフィスがある。

電話応対から事務作業、各部門の業務サポート、人事、経理補佐など幅広く行う部署である。

清良が出社すると、隣の席の先輩・仲根(なかね)はその変化にすぐ気がつき「あ」と声を漏らした。

「待って待って、このフローラプリントの限定バッグ、日本で扱ってないやつじゃない? どうやって手に入れたの? っていうか、いくらしたの?」

軽く二十万は超える有名ブランドの高級バッグ、まさかバレてしまうとは。スタンダードなロゴデザインなら誰もがそれと気づくが、期間限定の花柄なら気づかれないのではないかと安易に考えていた。

想像以上に知名度の高い商品だったようだ。いや、もしかしたら仲根がブランド品に詳しすぎるのかもしれない。

「これは……えっと、もらいものなので……」

言い訳にしてはお粗末過ぎた。こんな高級品をプレゼントできる輩などなかなかいない。

仲根は兼ねてからの疑いを強め、ギラリと目を光らせる。

「また旦那さんから? ね、天羽さんの旦那さんって、一体何者なの? 普通の人って言ってたけど、それ、普通の会社員がほいほい買えるようなものじゃないよね? この前の服だって」

以前、新居のクローゼットに掛かっていた服を適当に見繕って着てきたら、とんでもないブランド品で、仲根から仰天されたことがあった。

清良はどんな言い訳をしようかと、ひくひくと口元を引きつらせる。


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