chocolate of midsummer〜遅咲きのバレンタイン〜
仲直りしなよ、そう周りから言われても素直に謝れない。この想いを伝えることなんて、もっと無理だ。

でも、勇気を出してバレンタインの日に謝ろうとチョコレートを用意した。あたしと栄治はチョコレートが好きでそれがきっかけで話すようになったんだから……。でも、結局は渡せなくて季節は夏になっている。

もう仲直りできないのかな。この想いを伝えることができないのかな。

あたしの中にはそんな重い気持ちしかない。



練習が終わり、あたしはボウッとした頭で音楽室を出る。こんな風にフラフラしながら帰るのは何度目だろう。

栄治と喧嘩してから、大好きなはずの歌もチョコレートも心から楽しむことができていない。楽しむフリをしていても、やっぱり心に穴が空いている。

今日は部活は午前だけ。午後は暇だからドラマでも見ようかと思っていたけど、やっぱり気分が乗らない。あたしはコンビニでチョコレート味のアイスでも買うことにした。アイスを食べながら中庭でボウッとしていよう。
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