chocolate of midsummer〜遅咲きのバレンタイン〜
「あっ……」

学校の近くにあるコンビニに入った刹那、中にいた人物と目が合う。相手と同時に呟いていた。

コンビニには眠そうな顔をした店員と栄治しかいなかった。栄治はアイスのたくさん並べられたコーナーに立っている。

ドクドクとあたしの中に緊張が走った。このまま逃げてしまいたい、そう思う自分もいた。でも、ここで踏み出さなきゃきっともう戻れない。そう思う気持ちの方が大きくて、あたしは声をかけていた。

「え、栄治……」

久しぶりに言うその名前が愛しい。名前を言うことができて少しホッとした。栄治は驚いた顔をしていて、あたしは少しずつ栄治に近づいていく。

「これ、オススメ」

あたしは栄治に自分が買おうと思っていたチョコレートアイスを見せる。ベルギーのチョコレートを使っているらしく、チョコレート好きの間ではおいしいと評判だ。

「知ってる。前からお前が買ってるの見てた」

栄治がそう言い、一瞬笑ったような気がした。それが嬉しくて、あたしはアイスを二個手に取ってレジに持っていく。
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