【修正版】午前8時のシンデレラ
いつ噛みつかれてもおかしくない。
私はどうやら彼の本能を刺激してしまったらしい。
「了解です、一条さん」
瑠偉さんと部長室の前で別れ、自席に着くと私は平静を装いながらパソコンを立ち上げる。
今になって心臓がバクバクしてきた。
頬に両手を当て、心の中で叫んだ。
あ〜、会社で何やってるんだろう。
自分からキスしちゃった。
顔から火が出そう。
もう彼を正視できないよ。
浮かれる気持ちに渇をいれながら、休み中に溜まったメールを処理していると、あっという間に時間が過ぎた。
気づけば午前十一時過ぎ。
「おかしいな。受付から内線がかかってこない」
十一時に来客用の松花堂弁当が五十個届くはずなのに。
不安になって業者に連絡してみる。
『昨日、キャンセルの電話頂きましたよ』
業者の回答に頭の中が真っ白になった。
昨日は私は会社を休んでいた。
キャンセルって一体どういうこと?
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