【修正版】午前８時のシンデレラ

「僕じゃ駄目なんですね。一条さん、この鍵、わざと僕に受け取らせましたね？」
杉本くんは手の中にある鍵をチラッと見て、苦笑いしながら瑠偉さんに視線を向けた。
もう一度よく見ると、鍵がひとつ増えている。
この鍵って？
首を傾げながら私も瑠偉さんに目をやると、彼は不敵の笑みを浮かべた。
「さあ？」　
「この腹黒さ。ホント、ムカつきます。いつか仕事で一条さん超えてみせますから」
杉本くんは上司である瑠偉さんを正面から見据えて宣言する。
その目はキラキラしていて素敵だった。
「望むところだね。今の暴言は不問にするけど、プレゼン資料今日中に出してもらおうか。期待してる」
そんな杉本くんの挑戦的な態度を嬉しく思ったのか、瑠偉さんはフッと笑った。
「わかりました。東雲さん、これ」
杉本くんは私に鍵を渡すと、寂しそうに笑ってこの場から去る。
私の手の中にあるふたつの鍵。
「瑠偉さん、この鍵は？」