【修正版】午前8時のシンデレラ
愛し合った夜と同じ姿をしていてハッとする。
漆黒のカクテルドレスに真っ赤なルージュ。
日本人離れしたその小悪魔的な美しい容姿は、人目を引いていた。
「また、あの人は勝手な事を」 
思わず舌打ちする。
姉の仕業だろう。
でなければ、芽依がここにいる訳ない。
あれはやり過ぎだ。
あんな露出の多い服着てこんな場所に来たら、それこそ狼に食われる。
俺をからかって楽しんでるのか、あの人は?
本当に質が悪い。
何が成功報酬は将来の妹とショッピングだ。
一刻も早く連れて帰らなければと思った。
他の男にこれ以上見せる訳にはいかない。
だが、芽依の様子がおかしい。
彼女はシャンパングラスを落とし、俺と目が合うと踵を返して逃げた。
「芽依?」
俺の声は、彼女に届いているはずだ。
だが、芽依は足を止めない。
ここまま逃がしたらいけない気がした。
逃がしたら一生手に入らないかもしれない。
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