【修正版】午前8時のシンデレラ
「悪い虫ですって?あら本当だわ。ずいぶん所有欲の強い虫ですこと」 
パソコンの設定を終えた同期の友人が、突然私の髪を持ち上げてにんまりと笑う。
黒髪ストレートのボブにスラリと伸びた手足。
秘書室にいてもおかしくないほど容姿も整っていてモデル体型の彼女は、深沢玲子という私の親友だ。
「芽依、今夜は空けておきなさいよ」
横目で私を見る彼女の言葉に「え?今夜はちょっと……」と断ろうとしたら却下された。
「ダメよ。パソコン設定してあげたんだから付き合いなさい」
この顔。キスマークの件で定時後に事情聴取する気だ。
絶対面白がってる。
イケメンの杉本くんには目もくれず、彼女はスタスタと海外営業部を出て行く。そんな彼女の後ろ姿を見て杉本くんが言った。
「深沢さんて噂通りの美人ですけど、独特の雰囲気持ってますね」
「まあね。でも頼りになるの」
彼女とは新人研修で仲良くなり、週末は一緒にランチを食べに行く仲だ。
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