【修正版】午前8時のシンデレラ
完璧なまでに美形なこの顔に触れてみたい。
一条さんはいつも笑みを絶やさない人で、私が雨の日に会社の廊下で滑って転んだ時も、にこやかに手を差し伸べて立たせてくれた。
『君、大丈夫?』
その笑顔がとても素敵で忘れられない。
一目惚れだった。
その日から、会社で彼を見かけるとひとりウキウキしていた。
告白する気もないし、彼に近づくつもりもなかった。
ただ遠くで眺めているだけでよかったのに、今彼と同じベッドで寝ている。
一条さんの顔に手を近づけようとしてハッとした。
今はそんな場合じゃない。
なんとなく下腹部に違和感というか鈍痛を感じてシーツをめくる。
ショックなことに自分も男性も何も身につけていなかった。
「う……そ」
驚きが自然と声になる。
マズいと思って、もう意味もないのに慌てて口を押さえた。
ハラハラしながら彼を見るが、起きる様子はない。
本当にやらかしてしまったの私?
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