【修正版】午前8時のシンデレラ
扉の奥から「はい」という声が聞こえると、迷わず中に入る。
「失礼します」
私を見て温かい目で微笑む専務。
「東雲さんじゃないか。今日から一条くんのアシスタントになったって凄い噂になってるよ。ここに来るなんてどうしたの?珍しいね」
ドアを入って正面奥にある執務デスクに座っている彼はシルバーフレームのメガネをかけていて、背はスラッとしている。社内でもやり手の役員で、ロマンスグレーのとても素敵なおじ様だ。
専務は山田部長と親しいのか、よく総務部に様子を見に来ていた。
有名店のお菓子をよく差し入れてくれて、三人でよくお茶をしたものだ。
「うちの一条が明日専務たちとパイプラインのプロジェクトの件で打合せしたいそうなんですが。ランチミーティングに参加して頂けませんか。美味しいお茶を入れさせて頂きます」
「明日ね……いいよ。空いてるし、問題ない。西嶋さん聞こえたでしょう?予定入れといてね」
専務が扉のそばに立っていた西嶋さんに向かって微笑する。
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