【修正版】午前8時のシンデレラ
彼には通用しないかもしれないけれど、なんとか誤魔化さないと……。
「ちょっと躾のなってない猫にやられました」
ハハッと笑って答えたら、彼は表情を変え、冷淡な声で吐き捨てるように呟いた。
「秘書室の化け猫か」 
それって西嶋さんのことですよね?
彼女は陰でそう呼ばれている。
ひょっとして専務から何か話を聞いたのだろうか?
察しがよすぎるよ。
一条さんの口から『化け猫』なんて言葉が飛び出したことに驚いた。
周囲の気温がまた一気に氷点下まで下がった気がするのは気のせいだろうか。
経験するのはこれで二度目だ。
一条さん、怒ってます?
なんだかダークな雰囲気で怖いんですけど。
正にこれ、杉本くんの言ってた状況でしょう。
でも、こんなかすり傷ぐらいでどうして?
私がおろおろしている間に、一条さんは立ち上がって棚の上から救急箱を取り出す。
「消毒はした?」
彼に問われ、笑顔で返した。
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