【修正版】午前8時のシンデレラ
「いいえ。軽い怪我なので大丈夫です。一条さんは寝てて下さい」
たいした怪我じゃない。
「軽い怪我なら手をちょっと掴まれても痛いなんて叫ばないよ」 
いつもは物腰柔らかな一条さんの眉間に皺が寄ってる。
ああ、やっぱり一条さんは怒っている。
彼は私の手を優しく掴むと、私の様子を窺いながら消毒薬を塗っていく。
長くて細い指。
こんなにじっくり男の人の手を見るのは初めてだ。
「うっ……」
顔をしかめて痛みを堪える私に、一条さんは「少し我慢して」と言って謎めいた言葉を呟いた。
「今まで秘書室は近づきたくないから放置してたけど、もう限界だな」
「一条さん?それってどういう……」
意味がよくわからず彼の目を見て聞き返すが、説明してくれなかった。
素早く治療を終え、一条さんは魔性のような美しい顔で私に微笑んだ。
「俺を取締役会議まで眠らせたいんだよね?やっぱ枕がないと眠れない。膝枕して」
彼の言葉に思わずゴクリと息を飲む。
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