【修正版】午前8時のシンデレラ
彼と一夜を共にしてから一ヶ月経っている。
一度会っただけの女のことなんて忘れているだろう。
恋人になる約束をしたわけでもない。
しかも、あの朝彼から逃げた。
一条さんに恋人がいたって彼を責められない。
「やっぱり来るんじゃなかった……」 
ショックでシャンパングラスが手から滑り落ち、大きな音を立てる。
ガシャンと音を立てて割れたシャンパングラスは、まるで私の心のようだった。
ハートが粉々に砕け散った。
どんなに綺麗なドレスで着飾っても無駄だ。
自分は変わらない。変われない。
見苦しいだけだ。
やっぱり彼とは住む世界が違う。
彼が選ぶのはゴージャスで綺麗な人。
胸が凄く痛い。この痛みを治す薬はあるのだろうか。
「帰ろう」
これ以上ここにいても惨めなだけだ。
踵を返してこの会場から出るが、チクリと足が痛んだ。
シャンパングラスの割れた破片が刺さったのかもしれない。
今日はもう散々だ。
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