【修正版】午前８時のシンデレラ

夢なんて見るものじゃない。本当に私は馬鹿だ。
「……芽依？」
その声にビクッとする。
一条さんの声だ。
振り返らなくてもわかる。間違える訳がない。
でも、どうして下の名前で呼んだの？
頭の中は混乱している。
なにがなんだかわからない。
一瞬足を止めるも、彼と顔を合わせたくなくて走って逃げた。
だが、一条さんも私に気づいたのか、慌てたように追ってくる。
足の痛みを堪えながら走るも、彼の足音が迫ってきて焦った。
追ってこないで！
こんな醜い自分誰にも見られたくない。
誰にも知られたくない。
お願いだから、これ以上私を惨めにさせないで。
「芽依！」
一条さんが追いついて足がもつれて転びそうになる私の腕をつかんだ。
「なんで追ってくるの！」
私の声が悲痛の叫びになる。
この時の私はかなりのパニック状態になっていた。