【修正版】午前8時のシンデレラ
俯く私の頬に一条さんの指先が触れる。
「どうして泣いてる?」
気づかないうちに私は泣いていたらしい。
私の顔を覗き込んで彼は私の涙を拭おうとした。
「いや!見ないで!」
咄嗟に一条さんの手を振り払う。
だが、彼はそんな私の行動に怯むことなく、大胆にも公衆の面前で私を抱き締めた。
「落ち着いて、芽依」
一条さんは優しく、なだめるように囁く。
「大丈夫だから落ち着いて。大丈夫」
彼は私の髪に口付ける。
瑠偉さんの温もりが伝わってくるけど、このまま彼の腕の中にいてはいけない。
「……お願い。離して」
か細い声で懇願する。
今の私は彼の部下になりきれなかった。
ただの恋に破れた女だ。
一条さんにバレたことはもうどうでもいい。
早く消えたい。
だが、彼は離してくれなかった。
「逃げられるのはもう懲り懲りだ。やっと部下の仮面を捨てた君が現れたのに離す訳ないだろ」
私を捕まえてどうするというのか。
もう海外営業部では働けない。
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