【修正版】午前8時のシンデレラ
時間が経てば忘れると思ってたのに、彼とのあの夜の記憶が鮮明に頭の中に浮かんできて私の心を乱す。
いつも通りに仕事をしようとしても動揺しているせいか、メールの文章が頭に入ってこない。
いつまでこの状態が続くのだろう。
ハーッと溜め息をついたら、会議から戻ってきた部長に声をかけられた。
「東雲さん、ちょっといいかな?」
部長は五十九歳で背は低く、ふっくらしていて、世間で言うバーコードハゲでのほほんとしてる。
いつもニコニコしていて怒っているのを見たことがない。
どこかのご当地キャラみたいな感じで、社内の女性社員のウケもいい。私も仕事さえキチンとしてくれれば嫌いじゃない。
「はい」と返事をして総務部の隣にあるミーティングルームに部長と入る。
「東雲くん、辞令が出てね、今日から海外事業部に異動になったよ」
「は?」
思わず間抜けな声が出た。
人事異動の発表は二週間前に終わったはず。
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