【修正版】午前8時のシンデレラ
「東雲グループね。確かにあそこの会長は頑固じじいだわ」
杏樹さんの綺麗な眉間にしわが寄る。
「私よりも杏樹さんの方が詳しいですね」
私は祖父の顔もどんな性格なのかも知らない。
「叔父さまからちょっと話を聞いていてね。寂しかったでしょう?」
杏樹さんが私を優しく抱き締め、背中をよしよしとなでる。
突然の彼女の行動に戸惑った。
「杏樹さん?」
「よくひとりで頑張ったね」  
涙腺が急に決壊して、涙が頬を伝う。
ああ、瑠偉さんも杏樹さんもなんて温かいんだろう。
ずっとひとりで耐えてきた。
母が突然倒れて亡くなって……。
お金がなくてお葬式も出来なかった。
火葬場で母が煙になるのを呆然と見ていた私。
涙は出てこなかった。
アパートに帰っても誰もいない部屋にひとり。
孤独で苦しかった。
「もううちの子になっちゃいなさい!」
杏樹さんが私の涙を拭いながら、いつもの調子で言う。
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