檸檬が欲しい

高校2年の春


父は関西にある江戸時代から続く呉服屋の長男だ


一方母は一般家庭出身で親の過保護の下で育ったため少し世間からズレた人であった。

そうして親に負んぶに抱っこで育った母は就職後は仕事が上手くいかずに困っていた。

そんな時に僕の父と出会い母は父の由緒ある家柄に憧れ猛アタックをして結婚、直ぐに専業主婦へシフトチェンジした。



しかしそこから待っていたのは厳しい義母であった。



何せ相手は早くに亭主を失ってから長年続く家筋を守る役目を担った女だ。



母親を立派な嫁に育てるためにそれは、それは彼是と指導をしたそうだ。




息子の僕が高2になる春休みのある日、実母が倒れたと連絡を受けて遂にと言うべきか、母は逃げるように荷物を纏めて、実家であるこの町に帰った。一人息子の僕はもう高校生だし、母親に全て頼る年でもないから地元に残るつもりでいた。

しかし、頼りない母と成り行きで一緒に付いていくことになったのだ。



母の希望もあり町一番大きい高校である、市立鈴下高校に通うことになった。


この学校は公立であることが利点だったが母が一番着目したのは制服だろう。



キャメル色のブレザーにエバーグリーンにチェック柄のネクタイとパンツ。


人目に付く派手な服は母の大好物だ。






もし地元の知人にこの姿を見られたら笑われるだろうな。
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