檸檬が欲しい



「ちーくん、やめなさい」



救世主はテノールの落ち着いた声だった。



「ねぇちゃん、でも」



「ちーくん、その手を離してあげて」



そう言うと、一度老人を睨み付けたものの、大人しく手を離した。


そして解放された老人は逃げるようにその場から去った。



「ちーくん、こちらの方は私が倒れそうになったのを助けてくれた人よ。見て彼、鈴下高校らしいよ」



“ちーくん”



まだ怒りが収まってない様子の青年の顔。




“ちーくん”



機嫌悪そうに何か言いたげそうな青年の顔。




“ちー「なにジロジロ見てんだ?」




「いえ、何でもありません!!!」




「私の恩人なんだからそんなことしないで」




「俺が会計中で離れてる時に助かった。
 
 感謝する」



凄い不服そう。

でもお姉さんの通院に付き添ってる位だから案外悪い人ではないのかも。




「いえいえ、では僕はここで失礼します」

弟の方は歳も近そうだしもしかしたら、また病院で会えたり。


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