檸檬が欲しい
「へぇー、いよいよ雑用係みたいだね。」
先ずはじめに3人の中でも“まだ“一番マシな矢神くんの元に例のプリントを渡す。
「ちゃんと提出物出してよ。君たちが出さない限り僕は永遠に雑用係だよ!」
当の本人は何とも感じないかのように受け取ったプリントを左右にヒラヒラと動かす。
僕だって2週間経って委員長としてクラスのこと少しずつわかってんだから。
矢神くんのその人目を惹く容姿と何処かミステリアスな雰囲気は兎に角、女子に人気でクラスだけでなく、他のクラスや学年も超えてである。
更に他校にも彼の評判は届いているようである。
それに彼は不真面目に生きてるように見えて、かなり頭が切れる。
授業も真面目に聞いてないように見えて問われた問題には難なく答える。
だから教師陣も下手に注意できないんだろうな。
「この後、藤宮さんのお宅にも行くんだけど僕何処かわからなくてだから一緒に…」
無理を承知で頼んでみると、同性の僕がドキリとするぐらいの妖美な笑みで返される。
「お誘いは嬉しいけどこの後予定があるんだ。」
「そっか。でも明日絶対プリント提出してね!」
念押しすると意外にも矢神くんはきょとんとした顔をしていた。
なんだ、そういう年相応の顔もできるんだ。