*・.・* 時間旅行 *・.・*
黙り混む俺の代わりに

「それって………
理事長の隠し子の噂が関係してるのかなぁ?」と

尚人が口を挟んだ。

「それはまた………興味深い話しだな。
本当か?」

お兄さんに聞かれて

「…………わからない。」と首を振った。

「家庭の事情も
彼女だけ『青葉』ではなく『藤堂』なのかも………
何も知らされてないんです。
引き継ぎでも『タブーだから、首を挟むな。』と………。」

項垂れる俺に

「でも……藤堂は拓実に相談したいみたいだったんだろ?
何か言わなかったのか??」

再び首を振る俺に。

「彼女が何か言うまで待つだけか?
教師だろう?
相談したいって……彼女は意思表示したんだろう?
だったら、なぜ受け止めてやらない?
だから自分一人で行動したんじゃないのか?」とお兄さんは

厳しいが尤もな苦言を言い、叱ってくれた。

「………………………すみません。」

「俺に謝っても仕方ないだろう。
今回、彼女が俺の学校に来たのはチャンスだ。
どうしろとは言わないが………
教師なら、自分で考えて行動しろ。」

そう言うと、俺と尚人を置いて自室に消えて行った。

「ごめんなぁ。
兄貴………厳しいから。
普段は、むちゃくちゃ俺に甘いんだけど
教師の先輩としては………」

「いや。
目が覚めた。
………俺が甘かったよ。
自分の言い訳ばかり考えて逃げてた。
明日、彼女と話してみるよ。」

今日、ここに来て良かった。

澤先生の、教師としての姿勢に触れて

自分の甘さを知り。

一人で悩み

俺に絶望した彼女の気持ちに気づけた。

明日は………

『聞いて良いのかどうかはわからない』なんて

一歩引いたことはせず。

踏み込んで聞いてみようと思う。

これで、この学園での教師生命が絶たれたとしても………

後悔はしたくないから。

俺の気持ちを伝えると

尚人が

『俺も付き合うよ。
クビになったら、一緒に次を探そう!』と言ってくれた。

尚人を巻き込むつもりはないけど

俺一人では、あまりにも難しい問題だから。

相談にはのって欲しいと伝えた。




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