*・.・* 時間旅行 *・.・*
「ちょっと、先生!
それってズルい!!」

初めて見せた、中学生らしい表情。

可愛いな。

こんな顔をしたら、年相応だ。

だったら尚更、一人で行動させたらダメだ。

俺は、新人担任で……

頼りないし経験不足だ。

それでも中学生の彼女よりも、知識と経験はある。

それに、尚人と澤先生もついている。

一人では難しくても

三人よれば………彼女のお家騒動もどうにかなるような気がする。

「そう。
大人は、ズルいんだよ。
でも、だから…………
藤堂さん一人だと難しい問題も………解決出来るかもしれないよ。
直ぐに信じてもらうのは難しいけど。
俺を君の側に置いてみて。
絶対、名誉挽回してみせるから。」

俺の言葉に

「………………分かりました。
けど………
私、なかなか人を信じれないので……。」と

ずいぶん話し込み。

気づけば、窓の外は夕闇が広がっていた。

「とりあえず、今日は帰ろうか。
藤堂さんの悩みは………
君のタイミングに任せるから
話せると思ったら、声をかけてね。」

ニッコリ笑ってそう伝えると

「一見すると、私優先に聞こえるけど……
話さないっていう選択肢は……ないんですよね?
私が話さないと………
いつまでも澤先生達を紹介してもらえない。
……本当……ズルい。
けど…………ちょっと嬉しい。」

最後の一言だけは

聞こえるか聞こえないかくらいの

本当に小さい声だったけど………

俺の耳には届いた。

彼女は、どんなに強がっていても…………

やっぱりかまって欲しいんだ。

だったら…………………

鬱陶しいって思われるくらい関わって。

信頼を取り戻そう。
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