38歳バツイチ♀、医大生と付き合ってみた。(い)
「海、綺麗だね…」
「うん…」
「今日も天気良くてよかった」
「そーだね…」
懐かしい波の音
磯の香り
浜辺を天神と歩いた
「ここ、眞子がよく来てた海?」
優しく繋がれた手
優しい眼差し
優しい口調
「うん…
子供の頃、家族でもよく来たし…
…
高校の時は
嫌なことがあるとひとりで来てた
…
甥っ子連れて来たこともあったけど
その子ももぉ高校生になっちゃったな…」
「眞子の思い出の場所だね」
「思い出でもないけどね…」
「じゃあ、今日は?
思い出になった?
オレとここに来たこと…」
「うん…」
そのことを誰かに話すことがあるのかな?
話すとしたら
どんな思い出として話すのかな…
「オレも家族と来たいな…」
「え…?
…
天神の、家族?
お父さんとお母さんと?…弟?」
「んーん…オレの家族
…
家族ができたら
この海に連れて来たい」
オレの家族…
「なんで?海なんてたくさんあるのに…
わざわざこんな田舎まで来なくても…」
「綺麗だから、見せてあげたい
…
オレも今日
ここが思い出の場所になったし…
…
大切な人と一緒に来たい」
大切な人…
「うん、来れるといいね…」
「眞子も
オレが特別な人だから
ここに連れて来てくれたの?」
特別な人…
私の誕生日に連れて行ってくれたレストラン
特別な人にしか教えたくない店
天神は、そう言ってた
「うん…
特別な人だからだよ…」