デラシネ
ーカランー
「ありがとうございました」
”デラシネ”には大体決まった客が来る。今日の客は全員帰られた。、、、いや、目の前に一人いる。酒を片手に持ったまま、無防備に寝ている彼女が。
「起きろ、閉店」
声を掛けるがもちろん起きない。彼女は俺のことをどう思っているのやら。こんな無防備な格好で。手を伸ばしたくなる思いをぐっと引き寄せ、少し大きな声でさらに声を掛ける。
「よだれ垂らして寝てんなよ」
「、、、っは」
起きた。開ききっていないその瞳。ぼんやりとした彼女と目が合う。どうしてこうも間抜け面が似合うのか。なんて話をした日には怒られること間違いなしだ。
「もうおしまいか」
「そうだ、帰れよ」
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