新」世界で唯一のヒーラーは生殺与奪を握っている。復讐の物語り
 アリシアは自分が冒険者によく思われていない事は当然のように熟知している。だからアリシアは目を合わさないように俯いてかわし耳を塞ぐ。もう悪口は聞きたくない。心の何処かでそう思っていた。所詮は17歳の女の子。いくら世界で唯一の治癒魔法を使うことができても、騎士として肉体的に鍛錬しても精神は幼さが残っている。ただ強がっているだけで、そうしないと、いつ細い糸が切れてしまうかわからなかった。

 行商人を警護していた一人の口角が吊り上がる。赤い紅が艶やかに光る。金色の髪を見つめる赤い色の瞳が獲物を見つけたように殺気の色を放って、馬の手綱を引いた。腰に帯びている剣を抜いた。急速にアリシアと距離を詰める。馬上から大きく剣を振り下ろした。
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