新」世界で唯一のヒーラーは生殺与奪を握っている。復讐の物語り
 アリシアの姿がギルド会館から見えなくなると、静寂が訪れる。今までの騒音が嘘のように。サーシャは静まり返ったギルド会館、押し黙った冒険者達を見て、クスっと笑いがでる。
散々アリシアの悪口を言ったんだから、欲しくても買いに来れないでしょう。誰が恥をしのんで私の前に現れるのかしら。来たら罵倒を浴びせてやろうかしら、それとも販売を拒否してやろうかしら……サーシャは心の中で思う。友人の悪口を言った奴らに少しでも仕返ししてやろうと。

 そんな時だった。ギルド会館のドアが音を立てて開く。
赤い色の長い髪に目を引く派手な美人が口角を上げて口を開く。
「おい、サーシャ、アリシアがポーションを持ってきたであろう、売ってくれ」
出鼻をくじかれた気分のサーシャは顔を抑えながら肩を震わす。
「エルザ、あなたってなんでこんなにもタイミングがいいのかしら」
怒ったようなサーシャを見てエルザは何が何だかわからず、呆けたような顔になる。
「何を言っているんだ、意味が分からないんだが」
ええ、いまきたエルザには分からないでしょうねぇ。どう罵声を浴びせてやろうかと私が考えていたことなど……
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