捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
母と夕食の支度をしている間、背後からは理玖の楽しそうな声が時折聞こえてくる。
私はちらっとリビングを盗み見ては、理玖が拓馬さんと触れ合っている光景に自然と目尻が下がった。
「仲直りしたの?」
母にふいに聞かれ、どぎまぎする。
「仲直りっていうか……まあ。でもまだ今後の話はなにもしてないよ」
ケンカ……ともまた違う気がするし。
私たちの過去から現在を説明するのはひとことじゃ難しい。
「これまで真希がなにも話さないから聞かなかったけど、やっぱり理玖くんの父親はどんな人なのかなって思ったりはしたのよね」
そう言って鍋のつゆを小皿に取って味見をする母を見て、ぽつりと返した。
「……ごめん」
母も父も、根掘り葉掘り事情を聞いたりせず、私を支えてくれていた。
親不孝だな、と痛感し、俯いて下唇を噛む。
すると、母が朗らかな声で話し始めた。
「今日もね。佐渡谷さんが連日訪ねてくるものだから、いよいよお父さんが一喝しようとしてたの。でもね、さすがに彼のほうも焦り始めていたのか、玄関先で膝をついて頭を下げたの」
「えっ……?」
「そして懇願してた。『一度道を間違えてしまったからこそ、二度は間違いません。真希さんと子どもと一緒に幸せになりたいんです』ってね」
母の話に絶句し、なにも返せなかった。
土下座なんて……そんなことをさせてしまって罪悪感を抱く。同時に、彼の強い思いが伝わってきた。
さらに母が教えてくれた。
拓馬さんは、真剣な目をして父を仰ぎ見、『真希さんの料理の味と彼女が幸せを語ったときの顔が胸に刻まれていて、それはこの先も消えることはないです。この家が真希さんの幸せの基盤なんだと思うと、僕も誠実に向き合いたいと思っています』と言っていたらしい。
私はやさしい表情で理玖をあやす拓馬さんを改めて見て、胸の奥に熱いものがこみ上げた。
私はちらっとリビングを盗み見ては、理玖が拓馬さんと触れ合っている光景に自然と目尻が下がった。
「仲直りしたの?」
母にふいに聞かれ、どぎまぎする。
「仲直りっていうか……まあ。でもまだ今後の話はなにもしてないよ」
ケンカ……ともまた違う気がするし。
私たちの過去から現在を説明するのはひとことじゃ難しい。
「これまで真希がなにも話さないから聞かなかったけど、やっぱり理玖くんの父親はどんな人なのかなって思ったりはしたのよね」
そう言って鍋のつゆを小皿に取って味見をする母を見て、ぽつりと返した。
「……ごめん」
母も父も、根掘り葉掘り事情を聞いたりせず、私を支えてくれていた。
親不孝だな、と痛感し、俯いて下唇を噛む。
すると、母が朗らかな声で話し始めた。
「今日もね。佐渡谷さんが連日訪ねてくるものだから、いよいよお父さんが一喝しようとしてたの。でもね、さすがに彼のほうも焦り始めていたのか、玄関先で膝をついて頭を下げたの」
「えっ……?」
「そして懇願してた。『一度道を間違えてしまったからこそ、二度は間違いません。真希さんと子どもと一緒に幸せになりたいんです』ってね」
母の話に絶句し、なにも返せなかった。
土下座なんて……そんなことをさせてしまって罪悪感を抱く。同時に、彼の強い思いが伝わってきた。
さらに母が教えてくれた。
拓馬さんは、真剣な目をして父を仰ぎ見、『真希さんの料理の味と彼女が幸せを語ったときの顔が胸に刻まれていて、それはこの先も消えることはないです。この家が真希さんの幸せの基盤なんだと思うと、僕も誠実に向き合いたいと思っています』と言っていたらしい。
私はやさしい表情で理玖をあやす拓馬さんを改めて見て、胸の奥に熱いものがこみ上げた。