捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「あの子の髪色、そして瞳。ちょっと日本人離れしてますよね」

 理玖はよく混血児――いわゆるハーフに間違われる。

 顔の作りは日本人よりだが、髪や瞳の色が一般的な日本人よりも色素が薄いせいだ。

 理玖の父親は百パーセント拓馬さん。
 理由はまったくわからない。

 拓馬さんもどちらかと言えば色の薄い瞳だったがブラウンで、日本人離れしているほどではない。しかし理玖は、青みがかったグレーのような瞳。

「よく間違われるんです。お父さんは外国の人なのかって。あの子は拓馬さんの子だと誓って言えます。でも、ああいう特徴で生まれてきたから……拓馬さんはもちろん、ご実家からも、本当に拓馬さんと血が繋がっている子どもなのかと責め立てられそうだと思っていて」

 内密に私へ自分の秘書を送り込むお父様だ。
 私の存在を面白くないのは分かり切っている。

 理玖の顔を見れば開口一番に『うちの子ではない』と反発を食らいそうだ。

 DNA鑑定をしたところで、それをぶら下げて歩くわけでもない。明らかにしたって外見は変わらないのだ。
 他人は見た目だけで判断し、陰で噂するのかと思ったら我慢できない。

「理玖はもちろん、あなたへも……家族や世間の風当たりが強くなるのは嫌です」

 まして、拓馬さんはこれから会社を背負って立つ身だ。事実でなくともスキャンダルとして取り上げられたらマイナスだろう。

「なるほど……。それがずっときみを悩ませていた?」

 やさしい声色で言われ、私は無言で頷いた。

「私は拓馬さんの重荷にはなりたくない」

 だったら一緒にいられなくてもいい。
 ふたりを守るためなら離れていたってひとりで育てるのだって、なんだって頑張れる。

 拓馬さんと再会して甘えが出そうだった自分を戒める。

 ――刹那。
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