捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「悩むのは当たり前よ。だって可愛い我が子を思う親はみんなそう。だけどね。必ずしも真希の考える幸せが理玖の一番の幸せとは限らない。もっと広い視野でずっと先を見据えて考えなきゃいけないわよ?」
ぱちっと目を開けると、母が凛然とした顔つきで私を見ていた。
「ちなみにお父さんもお母さんももう歳だからね。大きくなっていく理玖をいつまで満足に抱き上げられるかわからないからね」
「お母さん……」
母は笑いながら、また別の毛糸を手に取ってくるくると手に巻く。
「あんたが覚えてる昔の幸せって、なに?」
「昔の?」
「子どもの幸せって、真希だって過去になにか経験してるはずでしょ」
私が覚えてる昔の……。なんだろう。
みんなでどこかへ出かけたり、ひなまつりやクリスマスとかイベントも楽しかった気がする。
けれど、あの頃が懐かしいなあ、って率直に浮かぶのは、彩希と父と母と家族みんなで囲んだ食卓の光景。
みんなで食べるのが大好きで、私は調理にかかわる仕事を選んだ。
あの頃の毎日の団欒が、現在の私に繋がってる。
「今度は真希が自分でそういう家族を作るのよ」
母の言葉にはっとする。
私の知るひとつの幸せは、この家での思い出のなかにある。
「大丈夫よ。子どもの幸せは、母親が笑っていることよ」
目頭が熱くなる。昨日の一件から、どうも涙腺が緩んでいるみたい。
私はさりげなく目元を押さえ、深呼吸をしてから母を見た。
「ありがとう、お母さん」
母は一度手を止めて、私を一瞥して気恥ずかしそうに早口になった。
「べつに。自分じゃわからないんだろうけど、真希、佐渡谷さんと話した日から、すっきりしたいい顔してるよ」
「え、嘘」
「それが今出せる答えだと思うわ。自信持って。うれしいことじゃない。あんたはひとりじゃない。しかも、もうひとり支えてくれる人が増えたんでしょう」
そうだ。一年前はどん底の中でひとりもがいていた。
今は私が手を伸ばせば、上へと引き上げてくれる人がいる。
「うん」
欲張ったっていいじゃない。
私は家族三人で、最上級の幸福を掴みに行く。
「いつでも帰っておいで」
たくさんの愛情に支えられて。
ぱちっと目を開けると、母が凛然とした顔つきで私を見ていた。
「ちなみにお父さんもお母さんももう歳だからね。大きくなっていく理玖をいつまで満足に抱き上げられるかわからないからね」
「お母さん……」
母は笑いながら、また別の毛糸を手に取ってくるくると手に巻く。
「あんたが覚えてる昔の幸せって、なに?」
「昔の?」
「子どもの幸せって、真希だって過去になにか経験してるはずでしょ」
私が覚えてる昔の……。なんだろう。
みんなでどこかへ出かけたり、ひなまつりやクリスマスとかイベントも楽しかった気がする。
けれど、あの頃が懐かしいなあ、って率直に浮かぶのは、彩希と父と母と家族みんなで囲んだ食卓の光景。
みんなで食べるのが大好きで、私は調理にかかわる仕事を選んだ。
あの頃の毎日の団欒が、現在の私に繋がってる。
「今度は真希が自分でそういう家族を作るのよ」
母の言葉にはっとする。
私の知るひとつの幸せは、この家での思い出のなかにある。
「大丈夫よ。子どもの幸せは、母親が笑っていることよ」
目頭が熱くなる。昨日の一件から、どうも涙腺が緩んでいるみたい。
私はさりげなく目元を押さえ、深呼吸をしてから母を見た。
「ありがとう、お母さん」
母は一度手を止めて、私を一瞥して気恥ずかしそうに早口になった。
「べつに。自分じゃわからないんだろうけど、真希、佐渡谷さんと話した日から、すっきりしたいい顔してるよ」
「え、嘘」
「それが今出せる答えだと思うわ。自信持って。うれしいことじゃない。あんたはひとりじゃない。しかも、もうひとり支えてくれる人が増えたんでしょう」
そうだ。一年前はどん底の中でひとりもがいていた。
今は私が手を伸ばせば、上へと引き上げてくれる人がいる。
「うん」
欲張ったっていいじゃない。
私は家族三人で、最上級の幸福を掴みに行く。
「いつでも帰っておいで」
たくさんの愛情に支えられて。