捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「俺と別れてからずっといないんだろ? 気づくの遅くなって悪かったよ」
「はあ? 別に謝ってもらう筋合いありませんけど?」
「いいって。強がらなくても。真希は昔からひとりで頑張るからなー。もっと俺に甘えろよ」

 私は光汰の言葉に絶句する。

 いやいやいや。まさか、私があれからフリーだった理由が自分にあるとでも?
 こっちに寄りかかってばかりで甘えさせてくれなかったのはそっちだし、むしろいまさら甘えたいとも思わない。

 堪らず掴まれていた手を振りほどき、キッと鋭い視線を光汰に送る。

「心の底からお断りします」
「いや、待てって。意地になってんの? あ、動転してんのか! 突然職場まで来て、急だったもんな」

 私は光汰の空気の読めなさに辟易し、大きな息をひとつ漏らした。

「光汰って相変わらずだね。そのプラス思考、場合によっては欠点になってるって気づかないの?」

 毎回そう。良かれと思って注意しても、大して反省もせず『大丈夫大丈夫』って軽く受け流す。
 ときにそういう姿勢が周りを救うこともあるだろうけど、他人の意見をきちんと受け止めて次に活かそうって意識しないのは成長しないと私は思う。

 しかし、やっぱり光汰には私の気持ちが伝わらなかった。

「なんだって? 俺がこんなに歩み寄ってやってるのに」
「だから、それを私がいつあなたにお願いしたの!?」

 言葉尻に被せる勢いで言い返すと、自分中心の光汰はカチンときたようで表情をがらりと変えた。

「こっ……の、黙っていれば!」
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