捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
 拓馬さんより半歩後ろを歩き、ジュエリーショップに入店した。

 壮麗な店内に圧倒される。
 まるで外国へ来たかと錯覚させるインテリア。ガラスケースひとつとっても、一般的なものとは違い、足など細部までおしゃれなデザインが施されている。

 なんて言っても、照明がキラキラとしていて、それに照らされているたくさんのジュエリーもまた眩い光を放っていた。

「いらっしゃいませ」

 店員の女性たちに恭しく頭を下げられ、無意識に肩を窄めて歩く。
 拓馬さんから離れずに、ちらちらと近くのショーケースへ目をやった。

 どれもこれも華美で私には分不相応。だけど、こうして眺めることも滅多に出来ない経験だから、ここぞとばかりに見て回ろうかな……。

 開き直ってショーケースへ近寄り、順に見ていく。
 初めは信じられないほど高価な商品が並んでいたけれど、そのうち変になれてしまったせいか、十数万のものが安く感じる自分がいた。

 はっとして冷静になり、それでも相当な金額だと我に返ったときだった。

 丸みを帯びた四角のひと粒ストーンのピアスに意識を引かれた。
 上品な色合いのカラーストーンはブルートパーズ。とても美しくて、思わず見入ってしまった。

「真希、これどう?」
「えっ、な、なんですか?」

 慌てて視線を逸らし、拓馬さんが指で示すほうを見る。

「……指輪?」
「うん。結婚指輪。なんだかんだタイミング逃してたのがずっと気になってたから」
「私のことを気にしてるんですよね? それなら大丈夫ですよ。今は指輪をしていない夫婦もいるみたいですし」

 私も以前の仕事なら衛生上、指輪は外さなければならなかったから、あまり指輪に固執していなかったし。

 ふと拓馬さんを見たら、まっすぐな瞳で言われた。
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