捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
 そのあとは、最近美味しいと有名のレストランで早めのディナーを済ませた。
 理玖と両親が待っていると思ったから。

 車に乗って時間を見ると、午後七時半。シートベルトを締めようとしたとき、自分の左手に新品の指輪が視界に入って面映ゆくなった。

「少しだけ寄り道しても大丈夫かな」

 拓馬さんに言われ、振り向いた。ハンドルに手を置く彼の指にもまた、対の指輪がはめられている。

「んー、さっき母から理玖はお風呂もご飯も終わって遊んでるって言ってたので、少しなら寝る前までに間に合うかな?」

 私がスマホを弄ってメッセージボックスを見ながら答えると、拓馬さんはギアを入れた。

「じゃあちょっと急ごう」


 車で十数分。拓馬さんは広い駐車場に車を停めた。

「この辺り、私の母校の近くです。懐かしいな」

 窓の外を眺めていて、卒業した専門学校付近だと気づいていたが、まさかその目と鼻の先が目的地とは思わなかった。

 きょろきょろと周りを見ていると、拓馬さんがシートベルトを外しながら言った。

「俺の母校もここ」

 暗くてよくわからなかったけど、キャンパスの駐車場だったみたいだ。

「えっ。ここって……日本でも一、二を争うほど偏差値の高い国立大学……」

 私の専門学校はこの大学の名がついた駅を利用し、すぐそばを歩いて通っていた。

 拓馬さんって、英才教育を受けて今では会社を任せられるほどになったんだろうとは思っていたけれど。いざ、はっきりするとやっぱり驚く。

 なにより、自分の母校と近かった事実がなんだかうれしい。
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